ごじゃっぺ高座

 新聞で知り驚いた。私みたいな下々のものは市長としゃべったことがない。それより、市長は那須塩原市民の私の顔なんぞは知らないだろう。それがひょんなことからお互いを知るようになった。

　高校の同級生からメールがあった。名前も顔も忘れていた。那須塩原駅西口の店で宴会を開くので出席しないかとのこと。同級生は東京在住。仕事で当地にいたことがあるそうだ。今回が２回目のお誘い。一回目は都合が悪く断った。たぶん仕事仲間も交えて、そこへ当地在住の高校の同級生の私が加わる。そういう図式を思い描いていた。当日家に合った高校の卒業アルバムを持参し、４０年ぶりにあった。出席者の顔を見て驚いた。定年退職をしたおじさんばかり。そこへ少し遅れてどこかで見た方が入って来た。それが市長であった。まったくのプライベート。私の前に座った。８人集まった。この仲間は市長も交えてたまに宴会をしているようだ。しゃべれば全く普通のおじさん。市長がお手製の手料理を持参し、それを皆で味わった。止めたら料理屋を開くといっていた。アユ釣り仲間とか。そのうちに一人帰り、二人帰り、残ったのは同級生夫婦と私と市長と市長の親戚でもあり、その飲み屋の店主。そこで酔っぱらってきた私が悪い癖をだした。

　市長の目の前で落語を演じてしまったのだ。かなり酔っぱらっていたので支離滅裂。市長のあきれ返った顔しか覚えていない。市長と店主を残して私と同級生夫婦は帰った。手にはしっかりと市長から頂いたお料理があった。

　家に戻り、酔いがさめて冷や汗が出た。いくら酒の席とはいえ、市長にマンツーマンでヘタな落語を演じたのだ。これはわび状を書かねばならぬとセコイことを考えた。

　ちょうど落語会の準備に取り掛かっている最中で、お客様に案内のはがきを出したところだった。市長にわび状も書き、ついでに落語会の案内も同封した。

　落語会当日、挨拶をしていたら一人どこかで見た方が入って来た。市長であった。あせっちゃったよ。でもうれしかったですね。最期まで落語を聞いて頂き、またその時の演者は昔昔亭桃太郎。市長ということがわかり、とっさに市長のことをネタにした。市長も大笑い。

　落語好きの市長は信用できる。前の市長も落語を聴きに来てくれた。ありがたい。実を言うと今回も市長に落語会の案内状を出した。ハプニングでまた当日やってくると期待していたところだ。

　公務のあと、夕飯を家で食べていたら職員から電話。その最中に気分が悪くなり救急車で搬送。そのまま帰らぬ人となった。

感謝しております。合掌。